聖闘士星矢

年表




 聖闘士星矢の特別増刊「コスモスペシャル」には、神話の時代からの歴史表が載っています。
 このムックが出来たのはポセイドン篇の中盤くらいなので、ハーデス篇で明らかになったような事実は入っていません。
 それらをまとめて、順に再構成していこうと思います。
 ちなみに、ギリシャ神話とも微妙に違うこれを超神話というそうです。
 白文字部分はコスモスペシャルの年表に記載されている事項で、青文字はそれ以後の情報から推測される事項です。
2007/01/21
本稿中で、時の神クロノス(Chronos)と農耕神クロノス(Cronus)を混同するという、
初歩的かつ根本的なミスをしていることがわかりました。
長年に亘って間違った情報を掲載してきたことをお詫び申し上げるとともに、
ここに修正させていただきます。
また、ご指摘下さった山の影氏に無限の感謝を。

大爆発

 いわゆるビッグバンのことである。
 この時代以前のことは全く解っていないが、大爆発には時の神クロノスが何らかの形で関わっているらしい。
 が、これにはいささか疑問が残る。
 ともかくこれによって神々の意志(ビッグウィル)と呼ばれるものが解き放たれ、  これが宇宙のかけらとぶつかって星々と宇宙空間を形成していった。

地球創世

生命の誕生

 神々の意志が宿った星地球に、大地であるガイア、天空たるウラヌス、大洋となるポントスが生まれ、次いで生命が生まれた。
 ギリシャ神話とはクロノスと順番が違っているのが興味深い。
 ともかく、その命たちは神々のイメージする姿へと進化していき、やがて人間が誕生したようである。

神々の時代

三神の誕生

 超神話によれば、人間たちの中から神々の意志を発言させた者が現れ、その最初の三人がゼウス、ポセイドン、ハーデスとなったという。
 しかし、ここには異説を唱える余地がある。
 何故なら海底神殿において、海皇ポセイドンがペガサス座の青銅聖闘士星矢に対して、
「全ては神が与えたのだぞ。お前たちが見ること聞くこと、そして愛する心すらもな」
 と言っているのである。
 また、神話に詳しい天秤座の黄金聖闘士童虎によればハーデスは農耕神クロノスとレアから生まれたということらしく、 その肉体は人間の物とは根本的に異なるようである。
 これらから、神々の意志の体現とは別に、農耕神クロノス以外の神々らも既に地上にあって、後の神々を生み出したと言う方が自然であろう。
 どちらかというと、タナトスやヒュプノスら本筋から離れた神々らが、神々の意志を発現させたタイプの存在ではないだろうか。
 どちらにせよ、神々の意志がセブンセンシズやエイトセンシズを凌ぐ超感覚であることは間違いない。

共同統治とアベルの叛乱

 やがてゼウスは天界と地上を、ポセイドンは海界を、ハーデスは冥界を治めるようになる。
 ただしこの三者のうち、ハーデスだけはいささか事情が異なる。
 なぜなら、既に存在していたらしい海界と天界とは違い、冥界は人間を律するためにハーデス自らが作り出したものであるからだ。
 当時既に神々は人間をいささか持て余していたようである。
 太陽神アベルによれば、「我らの父ゼウスがデュカリオンの大洪水と呼ばれる天罰を下した」とのことである。
 この時代、一度人間を盛大に選別する必要に迫られていたようだ。
 同時に、このころに太陽神アベル、戦神アレス、そしてアテナ、アポロンといった、ゼウスの子供たちが生まれていたらしい。
 余談だが、彼らのうち特にオリンポスの十二神と呼ばれた者たちは神衣(カムイ)と呼ばれる特別な衣を纏っていたようである。
 神々の意志と直結した存在なのかもしれないが、詳細は未だ謎に満ちている。
 だが、オリンポスの山があり、ゼウスの管理下でありながらある種神々の共有地となっていた地上は、各々の神々にとって極めて魅力的な場所であったようである。
 その意志をもっとも端的に示したのがアベルである。
 彼は地上を照らすべき太陽神の座に自ら就いて、地上を支配しようとしたが、ゼウスやアポロンたちによってうち倒され、歴史の中から抹消される。
 妹であるアテナは、アベルの大いなる理解者であったようだが。

ゼウスの消失

 一応の地上管理者であったゼウスは、アテナに地上の管理を託すと天界へと姿を消したらしい。
 理由についてはよく解っていない。
 兄である太陽神アベルを敬していたアテナを見かねたのか、それとも別の理由か。
 ともかく、このときから現代に至るまでアテナは地上の守護神となったのである。

第一次聖戦

 ゼウスが消えたことは、地上を手にしようとする神々の野望に火をつける結果となった。
 まず真っ先に行動を起こしたのはポセイドンで、七つの海から屈強の戦士たちを集め、これが海闘士マリーナとなるのである。
 実は聖闘士よりも発祥が古かった。
 そして戦力を整えたポセイドンは地上への進行を開始した。
 以後、神々の意志を秘めた勢力同志による争いを「聖戦」と呼び、この戦いは第一次聖戦と呼ばれる。
 オリハルコンで作られた鱗衣を身に纏った海闘士たちの戦力は地上の戦士たちを圧倒していった。
 このとき、ポセイドン以上に地上に執着していたとされるハーデスは、冥界の奥底で死者を待っていたようである。
 地上の幾点を制圧していったポセイドンは、大西洋上に巨大な城塞都市アトランティスを建造し、これを地上進行の前線基地とした。
 現代でも大西洋に最強の海将軍が配置されているのはこのときの名残かも知れない。

聖闘士の誕生

 海闘士によって地上の名だたる戦士たちが倒されてしまい、戦場には年端もいかない少年たちが目立つようになっていった。
 正義のための戦いを良しとするアテナが武器を嫌っていたために、彼らは己の肉体を武器として戦う術を身につけていった。
 それが、原子を砕くという究極の戦闘術の完成に至ったものと思われる。
 彼らが傷つくことを悲しんだアテナは、天空の星座を設計図とした鎧、聖衣を彼らに与える。
 聖闘士の誕生であった。
 このとき聖衣の製作を担当したのはムー大陸の錬金術師たちで、聖衣に命を与える技術などは秘伝の物であったらしい。
 聖衣はオリハルコン、ガマニオン、星砂粉スターダストサンドを材料として作られており、海闘士の鱗衣に勝るとも劣らない力を持っていた。
 特に、防御力だけではなく、戦闘能力の根幹となる小宇宙を飛躍的に上昇させる能力は特筆に値する。
 なお八十八の聖衣の内、太陽の通る黄道十二宮を名に冠した黄金聖衣は、このときの完成以来、最新の聖戦においてタナトスに破壊されるまで一度たりとも破壊されたことがなかった。
 また、髪の毛座、竜骨座、山猫座の三つの聖衣は特にコロナの聖衣と呼ばれ、黄金、白銀、青銅の区別から除かれた。
 これは太陽神アベルに仕えるための聖衣として特別に作られ、太陽神に捧げられたようである。
 ここまで太陽と太陽神にこだわったあたり、アテナがアベルを如何に尊敬していたかがうかがえる。
 なお、この時代聖域は誕生していないらしい。

ポセイドンの敗北

 聖闘士の誕生によってアテナは劣勢を覆し、ポセイドンに対して海へ還るように説得した。
 しかしポセイドンはアテナの申し出を拒否してアトランティスに立てこもり、大洪水と大地震によって多くの命を奪い去った。
 これを怒ったアテナは八人の聖闘士をアトランティスに送り込み、彼らは戦いの末にアトランティスを破壊し、海の底に沈めてしまった。
 ただし、このときの聖闘士が黄金聖闘士だったかどうかについては定かではない。
 もしかするとエリスが復活させたオリオン座のジャガーなどは、この時代の聖闘士なのかも知れない。

海底神殿の謎

 ポセイドンが立てこもったこのアトランティスは大西洋上にあったと言うが、この都市と海底神殿の関係ははっきりしていない。
 アトランティスが海の底に沈められた、ということは、もしかしたら海底神殿はアトランティスの名残と言う可能性もある。
 また、海界を支える七本の柱は神話の時代からと言われているが、アトランティスの成立とどちらが早かったのだろう。
 ともかく、アトランティスは破壊されたものの、海底神殿と七本の柱、そしてメインブレドウィナはつい近年まで破壊されることはなかった。

ブルーグラードの成立

 ポセイドンを倒したアテナは、その魂を北極の地に封じ込めたという。
 そのポセイドンの魂を監視すべく、何人かの聖闘士が北極へ赴き、定住し、一つの国家を作り上げた。
 これがのちのブルーグラードであり、氷戦士は聖闘士の流れを汲んだ存在ということになる。
 ということは、今でもブルーグラードには当時の聖衣が保管されている可能性もある。
 しかし、後にポセイドンとの間で何度かの戦いがあったことから、結局はこの封印は解かれているのである。
 現代においてポセイドンの魂が封じられているのは海底神殿である。
 ということは、既にブルーグラードにはポセイドンの魂は無いということになるのだが、 それでもなおブルーグラードの民がこの極寒の地より離れないのはどういうことなのだろうか・・?

ポセイドンの肉体

 ポセイドンの魂を封印した……というところから考えると、ポセイドンの肉体は別に封印されたか、あるいはこのときに破壊された可能性もある。
 そして、ポセイドンが復活の際に地中海の海商王ソロ家の血筋を借りることにしている理由もいまいちはっきりしない。
 ポセイドンは前聖戦ではハーデスの戦いを傍観していただけであり、それ以前もしばらくアテナとは戦っていなかったことから、 ソロ家の血筋を借りたというのは相当昔のことになるようだ。
 ソロ家は神話の時代からポセイドンと何か交流があった特殊な家系なのだろう。

ハーデスの地上侵攻

 ポセイドン以上に地上を欲していたという冥王ハーデスも、神話の時代にアテナと戦っている。
 第一次聖戦の相手がポセイドンであるので、おそらくその次に聖戦の相手となったのはハーデスであろう。
 しかし彼がポセイドンの敗北直後の、アテナと聖闘士たちが疲弊している時期を狙って行動を起こしたのか、 それとも二百数十年ほどの時を経たのか……。
 これは解っていない。
 ともかく彼が聖闘士に対抗すべく冥闘士を結成させ、冥衣を作り上げたことは確かである。
 そしてどうやらこのときには既に、タナトスとヒュプノスはハーデスの臣下になっていたようだ。

伝説の神聖衣

 聖闘士星矢における最大の謎の一つがこの時代に起こっている。
 三神と呼ばれ怖れられた一人ハーデスの神の肉体が、アテナの聖闘士の中でも最下級の青銅聖闘士であるペガサスの聖闘士によって傷つけられているのである。
 現代と、それ以前のいくどかの聖戦においてハーデスは、真の肉体をエリシオンに収めたまま眠らせて、復活の度に仮の肉体を選んでいたのだが、 これはハーデスが自分の美しい肉体が傷つくのを怖れたからだと言われている。
 とすれば、その判断の原因はこのペガサスの聖闘士によると断言するしかない。
 そして、この件と関係するか解らないがおそらくこの時代に、ヒュプノスとタナトスは神聖衣の存在を目の当たりにしている。
 神の血によって蘇った聖衣は限りなく神衣に近い神聖衣となる……と。
 この聖衣が何座の聖衣なのかは解っていない。
 現代においてペガサスの聖衣は単なる青銅聖衣であり、神聖衣ではない。
 現代に残っている神聖衣はアテナの聖衣だけである。
 しかし、二人が怖れた神聖衣がアテナの聖衣であるとしたら、タナトスが「これがアテナの聖衣か」と言ったことと一致しない。
 まして、ハーデスを傷つけた聖闘士がただの青銅聖闘士とも思えないので、ペガサスの聖衣は一度神聖衣になったのち、 何らかの原因で再び青銅聖衣に戻ってしまったというほうが考えられる。
 なお現代のペガサスの聖闘士星矢は、このときのペガサスの聖闘士の生まれ変わりであるとハーデスが断言している。

聖域の成立

 第一回聖戦の時には存在しなかった地上におけるアテナの根拠地だが、第一次聖戦後七世代ほどを経て「聖域」として完成した。
 アテナ神殿を中心にして、その前にはアテナの地上代行者たる教皇の間。
 そこへ至るための十二の宮殿には、最強の黄金聖闘士が立ちふさがり、十二宮付近では宮を飛び越えてテレポーテーションすることも出来ない難攻不落の要塞である。
 完成以来、近年になってアテナの化身城戸沙織を奉じた青銅聖闘士五人がここを抜けるまでは、 この十二の宮殿を突破した者は一人もいないとされている。
 聖域の周辺には聖闘士の訓練施設が設けられており、教皇とアテナの小宇宙によって張られた結界によって一帯は外界から隔絶されている。
 また、この聖域の傍には禁断の地として封印された太陽神アベルの根拠地、ディグニティーヒルがある。
 

混沌の時代

ギガースとの戦い

 アテナと聖闘士たちが何度目かの聖戦を終えた後に、聖域を脅かしたのがギガースたち巨人族である。
 ただし、この巨人たちについては何一つ分かっていない。
 ギリシャ神話によれば、彼ら古代の巨人たちはオリュンポスの神々が総出で当たらねばならなかったほどの敵であり、 その戦闘力はアテナの聖闘士を上回ったとされている。
 この戦いは特にギガントマキアーと呼ばれ、聖戦の一つとは数えられていないところから、アテナが他の神々と共同戦線を張った可能性も考えられる。
 なお、彼らがどこから来たのかについては、ハーデスが連れてきたとも、ゼウスの仕業であるとも云われている。

ムー大陸の沈没

 ギガントマキアーの前後、聖衣誕生の地であるとされるムー大陸が、太平洋の奥底に沈没してしまう。
 このムー大陸の沈没によって、製作途中の聖衣と、多くの錬金術師の命が奪われ、聖衣を修復する技術も失われてしまった。
 ムー大陸沈没の原因は依然として不明である。

ムー大陸の謎

 ムー大陸は聖衣生誕の地であり、聖衣に命を与える技術があった場所でもあると思われる。
 ここが失われたことで、聖衣修復の技術も失われてしまった……といわれているが、現代においても聖衣を修復する技術を持った者が一人いる。
 黄金聖闘士、牡羊座アリエスのムウである。
 このことから、彼がムー大陸人の末裔であると見ることもできる。
 もう一つ考えられるのは、彼の師である教皇、前牡羊座の聖闘士シオンがこの技術を持っていた可能性である。
 というのも、現代から数えての前聖戦では七十九名の聖闘士が参加し、たった二人しか生き残らなかったのである。
 このときに聖衣の大半が死んでいて当然であり、ここに聖衣の修復できる人物が不可欠であるからである。
 額に同じ様な特徴を持つ彼らは、貴鬼も含めてみなムーの末裔なのかも知れない。

 もう一つの謎は、ムー大陸に作成途上の聖衣があったと言うことである。
 すでにこのときには聖戦が何度か起こり、八十八の聖衣は揃っていたはずである。
 ならば何故、未だ作成途上の聖衣があったのか。
 謎は尽きない。

戦神アレス

 聖戦史上最も過酷と言われた戦いが、戦神・アレスとの戦いである。
 時代がいつ頃かは判明していないが、アレスとの戦いが複数回行われたという記録は今のところ無い。
 神々の中で最も凶暴と言われるアレスは、世界各地に争いの種をまき、人々に戦争をけしかけるという、 他の神々が決して行わなかった手段をもって地上を荒らし回ったという。
 彼の軍団狂闘士(バーサーカー)は「炎」「火」「恐怖」「災難」の四軍団に分かれており、それぞれの力を以て破壊と殺戮の限りを尽くしたという。

アレスとハーデス

 アレスの目的が何であったのかは分かっていない。
 凶暴な彼の性格を考えれば単に戦争を起こすことが目的であったとも考えられるが、ここで問題となるのがアレスの数少ない理解者であったという冥王ハーデスの存在である。
 アレスの引き起こす戦争によって殺された人々はすなわち冥界の住人となる寸法であり、この聖戦の糸を裏で引いていたのがハーデスであるとの説もある。

劣勢と逆転

 この聖戦に参加したアテナの聖闘士は、当時の総数に等しい58名であったという記録が残っている。
 だがそれにも関わらず戦いは劣勢であり、多くの聖闘士が命を落としていった。
 彼らの死を嘆いたアテナは、ついに己の信念を曲げて天秤座の聖衣を武器として使用することを天秤座の聖闘士に許可した。
 十二の武器を手にした聖闘士たちは劣勢を挽回し、狂闘士四軍団は壊滅。
 アレスは冥界へと逃げ込んだと言われている。

天秤座の聖衣

 天秤座の聖衣は聖闘士の善悪を計るとも言われているが、それはこの聖衣が禁断の武器の要素を持っているからである。
 広く知られているように、アテナの聖闘士は正義の戦いを良しとする側面から武器の使用を禁じられている。
 そのため、剣や槍と言った明確な形での武器は存在せず、あっても鎖、鋼珠、円盤、あるいは薔薇といった、直接には武器ではないものに限られる。
 その例外が天秤座の黄金聖衣であり、これは分解すると十二の武器となる。
 すなわち、二節棍(ツインロッド)、三節棍(トリプルロッド)、槍(スピア)、剣(ソード)、トンファー、円盾(シールド)の六種が一対ずつである。
 数から推測されるように、おそらくは黄金聖闘士が使用することを前提として作られているものだと考えられる。
 その威力は星をも砕くと言われ、それが誇張だとしても近年に海界にて七つの海を支える柱を見事に砕くなどその壮絶な威力を示す例がいくつかある。
 ただし、過去の聖戦で対人に使われたのは狂闘士との戦いが唯一の例とされる。
 裏返せば、それだけアレスとの戦いは過酷であったと言うことなのだろう。

人間の時代

デスクイーン島の発見

 時代は不明だが、あるとき一人の聖闘士が赤道直下にある島で見たことのない聖衣箱を大量に発見した。
 この島は位置的にかつてのムー大陸の一部であったことになり、のちにデスクィーン島と呼ばれることになる。
 ここにあった聖衣箱には黒い聖衣が収められていたが、アテナの聖闘士たちは誰一人としてその聖衣を纏おうとはしなかった。
 やがて聖闘士の称号を剥奪された者や、性格故に称号を得られなかった者、パワーだけを身につけた者たちがこの島に集ってこの聖衣を纏うようになった。
 これが暗黒聖闘士の発祥である。

謎の聖衣箱

 八十八の聖衣が存在するというのに、それとはまた別に存在するこの聖衣箱にはあまりにも謎が多い。
 それらは八十八という数を完全に超えているらしく、いくつかは正当聖衣と同じ形状をしたものもある。
 誰が何のために製造したのか、今となっては語る者もいないが、このあたりにムー大陸が沈没した理由を解く鍵が隠されているのかも知れない。
 またそれとは別にこの島には正当聖衣が一つだけ眠っている。
 青銅聖衣でありながら黄金聖衣にすらない自己修復能力をそなえた、最強とも言われるフェニックスの聖衣である。
 もしかしたらこの聖衣は、ムー大陸の沈没寸前の最新技術が使われて作られたのかもしれない。

デスクィーン島の封鎖

 その拳を私利私欲のためにもちいた暗黒聖闘士たちの所業を嘆いたアテナは、デスクィーン島を封鎖することを決断する。
 強靱なパワーを持つある聖闘士に仮面をかぶせ、この仮面の聖闘士は封鎖を解こうとする暗黒聖闘士と戦い続けなければならない。
 以後デスクィーン島は、暗黒聖闘士たちを封鎖したまま一輝による解放を待つことになる。

謎の聖闘士

 現代においてデスクィーン島を封鎖していた仮面の聖闘士は、一輝の師でもあったギルティーである。
 ただ彼の存在があっても、実際に暗黒聖闘士は世界各地に悪名を轟かせていたので、実際にはデスクィーン島の封鎖は不完全であった。
 彼は一輝をけしかけてフェニックスの聖衣をとるために暗黒聖闘士に向かわせるが、 既に暗黒聖闘士を押さえつけるという本来の任務からはほど遠い行動をとっているようである。
 実際に彼の行っている任務はもはや呪いと言っても良く、アテナがこのような指示を出したことそのものが疑問である。
 事実、彼が一輝に対して行った訓練は、アテナの聖闘士のそれではない。
 また彼自身は聖闘士でありながら、その聖衣は一度たりとも姿を見せていない。
 このような特殊な任務から、彼の聖衣は青銅、白銀、黄金のどれにも属していない四つの聖衣の一つではないかとも考えられるが……?

前聖戦

 243年前に起こった聖戦。
 このときの聖闘士は史上最大の79名という数であったにもかかわらず、 聖戦終結時に生き残っていたのは牡羊座のシオンと天秤座の童虎のわずか二人だけという過酷なものであった。
 このときの聖戦の相手は冥王ハーデスであり、近年の聖戦のほとんどは地上に執心のハーデスによるものであったと考えられている。
 百八の冥闘士はユーラシア大陸の中ほど、五老峰よりはるか西の巨塔に封じ込められ、童虎は仮死の法をアテナに掛けられて肉体を休ませながらもその監視を続けることになった。
 一方でシオンは教皇として聖域を治め、かつて無い被害を受けた聖闘士の復興に当たったのである。
 ただしこの戦いはその過酷さとは裏腹に、次なる聖戦の予兆でしかないと言われていた。
 この戦いではハーデスの側近ヒュプノスとタナトスという二人の神も地上に姿を現し、ハーデスに関するいくつかの謎が解き明かされたとされている。  その中で最も重要な発見は、ハーデスが神話の時代から自らの肉体をエリシオンに眠らせ続けているというものであった。
 ハーデスが地上侵略に執念を燃やす理由の一つを発見した童虎とシオンは、次なる聖戦こそがハーデスとの長き戦いに決着をつけるものであるとの意識を確かにしたのであろう。

ハインシュタイン家の謎

 ハーデスの側近たる二人の神ヒュプノスとタナトスは、この聖戦によって欧州の一貴族ハインシュタイン家の屋敷にある物置の中に封印された。
 しかし、彼らほど強力な存在が何故に一般人に近いところに保管されたのかは大きな疑問である。
 考えられることは、少なくともハインシュタイン家に近い人間か、あるいは当主が聖闘士であった可能性である。
 79名と言われているこの聖戦の聖闘士数だが、高齢その他の理由で参加できなかった聖闘士だったのかもしれない。
 また、二百数十年後のハインシュタイン家の後継者であるパンドラは、ヒュプノスをして「惜しい」と言わしめた人材であり、 ハインシュタイン家が極めて特異で聖域と関わりのあった家であることが想像される。
 その家をハーデス城と変えたのは、ヒュプノスとタナトスの皮肉であろうか。

聖衣の復旧

 当然だが、79名もの聖闘士が参加したこの戦いでは多くの聖衣が死に絶えていておかしくないはずである。
 ムー大陸が滅びた後では、聖衣の修復を出来る人材はごく限られている。
 しかし、現代唯一の聖衣の修復者であるムウの師であった牡羊座のシオンが、聖衣の修復技術も彼に教えた師である可能性は高い。

ジェミニの叛乱

 13年前、ハーデスとの聖戦に備えてアテナが聖域に降臨したが、このときに教皇たるシオンは新たなる聖戦を迎えるために、 当時最高の実力を持っていた双子座のサガ、射手座のアイオロスの黄金聖闘士二人のうちからアイオロスを選び次なる教皇に指名した。
 サガの双子の弟カノンは、アテナもろともに教皇とアイオロスの暗殺をサガに持ちかけるが、サガの逆鱗に触れてスニオン岬の岩牢に幽閉される。
 しかしこの直後にカノンは岩牢内部において、長年封印されていたポセイドンの三つ又の鉾を発見し、これを引き抜いて海界に侵入することに成功する。
 ポセイドン神殿に入り込んだカノンは、眠りについていたポセイドンを目覚めさせて聖戦を起こすように誘い、自らは海闘士の頭領となる。
 一方で聖域においてはサガは、スターヒルにおいてシオンに直訴した際に己の邪悪を暴かれたことにより別人格を呼び覚ましてしまい、シオンを殺害して教皇になりすました。
 教皇の死を伏せたままアテナ暗殺を謀ったサガだが、アイオロスにこれを阻まれ、山羊座のシュラを差し向けてアイオロスを抹殺したもののアテナと黄金聖衣を逃してしまった。
 だがアテナ生存を知らぬサガはそのまま聖域を掌握。
 以後十三年に渡り、聖域はサガの天下となった。

死と眠り

 サガの乱と時をほぼ同じくして、ハーデスの側近である二人の神タナトスとヒュプノスの封印が、ハインシュタイン家令嬢パンドラの手により誤って解かれてしまう。
 復活したタナトスとヒュプノスは百八の冥闘士とハーデスの完全復活まで一時姿を消すが、パンドラの魂を拘束することでハーデス復活の役を担わせる。
 パンドラの弟としてハーデスの魂を現世に蘇らせるとともに、パンドラ以外のハインシュタイン家を全滅させることによってハインシュタイン城をハーデス城に変えた。
 またタナトスとヒュプノスはハーデスの仮の器として、グラード財団総帥子息の一人瞬を選び出して、ハーデスを乗り移らせようとする。
 しかしこのときは瞬の兄一輝によって阻止され、瞬の肉体を拘束するためのペンダントのみを残してパンドラは引き下がった。  以後、ハーデスは封印されつつも魂のみの状態でジュデッカに居座ることになる。

ハーデス封印の謎

 ハーデスの降臨は、パンドラがタナトスとヒュプノスを解放して間もなくということになっている。
 しかしハーデスと百八の魔星は、童虎が前聖戦より監視し続けている塔に封印されているはずであり、ハーデスの実際の活動もこの塔の封印が解かれるまで表立ってはいない。
 死者に仮の命を吹き込むことで尖兵と成すことが出来るハーデスならば、百八の魔星無しでも十分活動できるはずである。
 そこで、ハーデスに施された封印は、魂の実体とその力を分離して別々に仕掛けられていたと考えることが出来る。

現代

銀河戦争

 アイオロスは死したものの、今際の際に幼い女神と黄金聖衣を一人の人物に託していた。
 日本最大にして世界有数の財閥、グラード財団を抱える城戸光政翁その人である。
 彼は女神を孫娘沙織として育てる一方で、自身の百人の子供を女神を守る聖闘士にすべく世界各地へと送り込んだ。
 城戸光政亡き後、見事青銅聖闘士となった十人が日本に帰ってきた。
 邪悪と立ち向かうための真の聖闘士を見つけだすための戦い、銀河戦争の開始である。
 それは、最終聖戦の始まりでもあった。

聖域の浄化

 聖域を掌握したサガは既になんの杞憂も抱いていなかったが、やがて十人の聖闘士の中から五人が台頭してくるにつれて、自らの危機を悟り始めた。
 女神に見放された存在である暗黒聖闘士と死闘を繰り広げ、それをうち倒してしまった彼らを。
 死んだはずの女神が生きていると言うことと、黄金聖衣が敵の手にあることを悟ったサガは白銀聖闘士を刺客に送り込む。
 長き歴史の中でもかつて無かったであろう聖闘士対聖闘士の過酷な死闘が始まった。
 絶対優勢であったはずの聖域のサガだが、青銅聖闘士五人は彼の刺客を次々と打破してついには女神を擁して聖域へと乗り込んできた。
 女神を瀕死に追い込んだものの、五人の青銅聖闘士は神話の時代より不落と謳われた聖域十二宮と最強の黄金聖闘士を突破。
 女神の生還と共に、善の心を取り戻したサガは自決。
 黄金聖闘士の半分が戦死するという壮絶な戦いは終わり、聖域は浄化された。

海皇の復活

 聖域での戦いでアテナ軍の戦力が半減したことを知ったカノンは、ポセイドンの魂が宿った青年ジュリアン・ソロを担ぎ出して海皇として海底神殿に迎え入れた。
 海皇としての明確な覚醒の無いままカノンに操られたポセイドンは、ノアの大洪水を再び起こして地上浄化を目指す。
 しかし、自らを犠牲にして地上水没を遅らせようとするアテナを救いに海界に乗り込んだ青銅聖闘士五人によって海闘士七将軍は倒され、 神話の時代から海界を支えていた七つの海の柱は天秤座の聖衣によって崩壊。
 戦いの最中でポセイドンは完全復活したものの、海界の最後の柱メイン・ブレド・ウィナをペガサスの聖闘士星矢が打ち倒したことによって海界は崩壊。
 生還したアテナによってポセイドンは壺に封印され、地上破滅の危機は去った。

グレイテスト・エクリップス






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