消化器系疾患

(下痢・消化管内寄生虫・脂肪性下痢・増殖性回腸炎(ウェットテイル))

 ハムスターの軟便や下痢の原因としては、消化管内寄生虫や、増殖性回腸炎(ウェットテイル)、細菌、ウィルス、真菌(カビ)、腸内細菌のバランスの崩れ、脂溶性の下痢、など様々な原因が考えられます。ハムスターの下痢は人間の下痢と異なり、命に関わる病気です。下痢が2ー3日続くと脱水が進み、致命的な状態になることもあります。

 ハムスタ−の消化管内寄生虫には、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)、小型条虫(Hymeneolepis nana)、縮小条虫(Hymenolepis diminuta)ハムスタ−盲腸蟯虫(Syphcia obvelata)、ネズミジアルジア(Giardia muris)、トリコモナス(Trichomonas)などがあげられ、症状は軟便や下痢、体重減少などです。これらは糞便検査で虫卵などが検出され確認されます。これらの虫卵などが確認された場合は、クリプトスポリジウムにはサルファ剤の投与、条虫にはプラジクアンテル、蟯虫にはピペラジンというように、その寄生虫に効力のある投薬が必要になってきます。

 増殖性回腸炎は急性の下痢を引き起こし、特に若いゴ−ルデンハムスタ−に頻発し、購入してまもない時期に下痢をすることが多いです。原因としては、環境の変化によるストレスなどが関わっているとされ、カンピロバクタ−(Campylobacter spp.)、クロストリジウム(Clostridium perfrinrens)大腸菌(Escherichia coli)などの細菌が原因とされています。増殖性回腸炎の場合は、早急に広域の抗生剤や止瀉薬の投与と、生菌製剤やビタミンを投与して腸内細菌の活性化を図ります。しかしながら、下痢が重度で、補液をしても改善が見られない場合には、2、3日で死に至ります。増殖性回腸炎の場合は、下痢を起こすことでハムスターは急激な脱水を引き起こし、状態が悪くなりますから、急性の下痢の場合は、大至急動物病院で抗生剤や止瀉薬などを投与してもらう必要があります。

 また、他にも食事による腸内細菌叢の乱れからくる下痢や、抗生物質などの複数投与などで、クリストリジウムなどの細菌が増殖して引き起こされる下痢、脂肪分の多いものを与えすぎて起こる脂溶性の下痢、給水ボトルの細菌やカビによって起こる下痢など様々です。

 下痢の原因は様々なものがありますから、下痢ををしたらそのまま様子をみるのではなく、すぐに動物病院へ連れていき検査と投薬をしてもらう必要があります。


(症例201 脂溶性下痢)ゴールデンハムスターのメスを飼い始めましたが、今日、2匹飼ってるうちの1匹のほうのメスのハムスターが、下痢をしてしまいました。ちなみに、下痢の原因は昨日かおとといにあげた、カシューナッツだと思います。それは元々人間の食べるもので、塩味がついていました。塩は水で洗って与えたのですが、やはりかなり油っこかったようで、しかも、そのメスだけが、ほとんどたべてしまっていました。オスはぴんぴんしています。やはり好き嫌いが有るらしく、オスは全く食べていなかったようです。すでに、きのうおとといからおかしかったはずなのに、下痢だと知ったのは今日でした。病気中の栄養の与え方や、いろいろな注意点が有りましたらぜひ教えてください。よろしくおねがいします。(1998.3.11 A・S様)

コメント;ハムスタ−にとって下痢は、命に関わる病気です。どのような原因があるにせよ、下痢をしたら早めの対処が必要になります。この場合、脂溶性の下痢と考えられます。通常脂肪分は、膵臓からのリパ−ゼという物質によりコロイド状になって小腸から取り込まれます。しかし、脂肪分が多いと、小腸に取り込める脂肪の量をオ−バ−して、大腸に脂肪分が流れます。そうすると、水分吸収の場である大腸の水分吸収が低下して下痢を引き起こすわけです。また、塩分がおおいものということで、浸透圧により、腸管内の水分が吸収されずに下痢をおこしたとも原因と考えられます。下痢の初期でしたら抗生剤の投与で治療可能ですが、下痢がひどくなったりすると、脱水して弱ってきますから、1〜3日で死亡してしまいます。末期の場合は、処置が難しいので、早めの対応が必要になります。栄養は、ペレットなどの固形飼料を与えて、低タンパクのものがよいと思います。脱水しますから給水できるように配慮してあげてください。

 

(症例203)ゴールデン メス 1才2ヶ月。2ヶ月前から体重が減りはじめ1ヶ月前から起きてくるのがおそくなり、食欲の方はあったのですが、お尻がぬれているのでウエットテールかと思いましたが下痢ではなかったので少し様子を見ることにしました(この頃から少し臭いがしてました)ケージに張り付いたときに膣の周りがぬれているように見え病院に連れていきましたが取り立てて悪いところがないということでした。その少し前から立ち上がったときに両後ろ足の付け根のあたりの皮膚がスカートのように垂れ下がっていました。痩せたのでそうなったと思っていたのですが...体重も一時120gをきって112gになりましたがすこしづつもどり134gまで戻りましたが顔が痩せて、そのスカートみたいな感じがひどくなっていたようでした。そして4月17日から下痢になり病院で便を見てもらうとかん菌が異常に増えているということで、薬をもらい飲ませていましたが21日に他界しました。飼育中(元気な頃)プラスチックの家をトイレにしていました。(中が尿でべちゃべちゃになって手足もべちゃべちゃにしていました)餌はハムスターフード、野菜、ひまわりの種、その他です。ケージは市販の網のもので床がプラスチックのものでした。それに木のチップを3センチくらい敷いていました冬はダンボールの箱に入れて20度から26度位を保つようにしていました。よろしくお願いいたします(1998/4/21 K・J 様) 

コメント;直接の死因の原因はウェットテイルと考えます。前半のお尻が濡れているというのは、

 

腸内細菌のバランスが崩れて下痢をしていると思われます。ハムスタ−にとって下痢は致死的な病気で、早めの抗生剤の投与でしたら、下痢も治りますが、処置が遅いと抗生剤も効かずに死んでしまいます。一つ気になることがありました。家をトイレにしていたとありますけど、これも疾患の原因を招いていたかもしれません。ハムスタ−は本来もぐって土の中で生活する動物です。巣箱のような寝床を与えても、もぐって暗いところで、トイレとか寝場所を決めるハムスタ−にとっては暮らしにくい環境です。このような飼い方は不衛生です。プラスチックの水槽にチップを半分くらい敷き詰めてかうと、トイレ、寝場所、餌場と、自分で決めますから清潔に暮らすことができます。もともとハムスタ−は非常にきれい好きですから、このような生態系も理解した上で飼うと、不必要な細菌感染や、下痢などを起こすことはなくなると思います。

 

 

(症例 消化管内寄生虫によるウェットテイル)1週間前にペットショップで購入した雄のキンクマハムスターです。生後3ヵ月位か、もう少しと言われました。金網のケージで1っぴきで飼っています。4日程前から小屋からでなくなり、下痢をするようになりました。その後餌や水をとろうとしません。下痢の翌日に病院に連れていき、便をみてもらったところ、1cm程の糸のような寄生虫と、卵がいました。駆虫剤を注射してもらい、毎日抗生物質とビタミン剤の液体をのませていますがあまりよくなりません。いまではほとんど便もでません。ゆうべやっと餌を小屋に運んでいましたが、あまり食べた様子はありません。通っている病院はハムスターにあまり詳しくないらしく、寄生虫のこともよくわからないそうなので、よろしければぜひ教えてください。(1999/5/2 Y・M様)

コメント;ハムスタ−の消化管内寄生虫は大きく分けて、原虫、条虫、鞭毛虫、蟯虫がいます。条虫は、縮小条虫と小型条虫です。この寄生虫にかかった場合、すべてにおいて下痢の症状がみられますから、現在の下痢は寄生虫によるものと思われます。これらの寄生虫に効く薬はドロンタ−ルでしょうか。犬猫で容量が異なりドロンタ−ルは猫用ですから、これをさらにハムスタ−の体重に合わせて処方するとよいかもしれません。抗生剤は下痢止めの抗生剤なのかもしれませんが、これは消化管の細菌を一時的におさえるという目的で使用します。今回は寄生虫が原因と考えられますから、この原因を早く除去する事が先決でしょう。対処療法として、下痢で脱水していますから、ブドウ糖等の補液なども必要で、皮膚を摘んでみてすぐに戻らなければ脱水していますから、これは注意して観察してください。

下痢(ウェットテイル)にはさまざまな原因があり、増殖性回腸炎(細菌)、ウィルス、カビ、寄生虫、食物(脂肪分が多いとか)をある程度見極めて治療する必要があると思います。食事ができているのでしたら問題はありませんが、下痢をしていれば脱水状態が続いてしまいますから早めの対応をした方がよいでしょう。ご自宅でしたらりんごのすったものとか、蜂蜜のとかしたものとかカロリ−の高いものを与えて水分補給をしてあげてください。

(症例 寄生虫と下痢)寄生虫の感染経路としてはどういうものがあるのでしょうか? 前回のハムスターも、今回のハムスターも、同じペットショップから購入してきて3、4日で下痢をしています。餌もトイレ砂も前のをそのまま使用しているのでどこをなおせばいいのかわかりません。餌は、ハムスターフードの小さいものと、ひまわりの種、乾燥コーンや、穀物のミックスです。また、すでに成虫がいたので、もし成長が3、4日以上かかるものならば、店で感染した可能性もあるのでしょうか?(1999/5/5Y・M様)

コメント;縮小条虫は、ガとかゴキブリとかそういった中間宿主から感染します。小型条虫はノミなどが絡んできますが、もともとあった条虫が自分に感染する経路、虫卵感染もあります。もし蟯虫でしたら、虫卵感染などに原因があるでしょうか。同じケ−ジを使っていますよね。通常下痢をした場合。細菌類は煮沸消毒でも死にませんから、新しいケ−ジをおすすめしています。下痢をして同じケ−ジで次のハムスタ−を飼ってきたらまた下痢をしたということは多々あります。これはケ−ジに付着していた細菌が増殖してハムスタ−に感染したものと考えられます。例えば初めは虫卵などで下痢をしたとしても、その下利便の細菌で今度は細菌性の下痢を引き起こしたということも十分考えられます。あとはストレスによる下痢でしょうか、移動に非常にストレスを感じるハムスタ−でしたら、しばらくして下痢をしたりしますから、このような可能性もあります。

(★症例 下痢)ゴールデンのオスで、生後1〜2ヶ月。 体長は多分10cmくらいです。現在は金網のケージに1匹で飼っています。エサは固形のハムスターフード1日約3個とキャベツ、時々りんご、煮干し、おやつにひまわりのタネ3個くらいを与えています。今日、巣箱の掃除をしようとして開けてみたら下痢の糞をしていました。目や耳も異常はなく、餌を食べたり回し車で遊んだりしています。が、その後、ふだんは糞をしないような床や回し車の中で糞をしました。このような場合も病院に連れていったほうがよいでしょうか?(1999/5/13 S・S様)

コメント;下痢をする原因はいくつかあって、寄生虫や、増殖性回腸炎(生後3-4ヶ月くらいまでに多い)、ウィルス感染、腸内細菌層の破壊、水分量の過剰、給水のカビなどいくつか考えられます。下痢はハムスタ−にとって非常に致死的な症状ですから、抗生剤の投与が必要になります。下痢が改善してきているようですが、下痢を引き起こした原因は解っていませんから、糞便検査などをそて、虫卵などの有無を確認後に脱水の状況をみて、抗生剤の投与を決めるとよいと思います。このへんは獣医さんの判断に任せられます。虫卵検査だけしてもらうとよいと思います。

(症例206 補液による下痢)ジャンガリアンハム、1歳、メス。1週間前から元気がなく、様子をみていたところ便が少なく便秘じゃないかと思い様子をみて水分も多くとらせていましたが、改善せず4日前に病院にいったところ種類を食べていなかったところから栄養がとれていないとの判断で栄養点滴を注射でされました。翌日から下痢になってしまい今日で二日経ちますたぶん注射で水分が沢山とれたので便秘の分が下痢になったような気がしますがどうなんでしょうか。それでも元気がないのでビオフェルミンをヨーグルトに溶かしてあげてみましたが。いまのところ改善されてません、病院にいって点滴をしてもらった方がいいのかそれとも自然にまかせてヨ^グルトやはちみつをあげていればいいのか教えて下さい。点滴はあくまで栄養のためだけですよね?(1999/5/30 K・Y様)

コメント;栄養点滴で下痢をしてしまったのは、水分の補液をしすぎたか、この栄養剤に抗生物質が入っていて、それが下痢を引き起こしたという可能性があります。おそらく前者の方であると思います。このようなときは下痢を先に止めたほうがよいでしょう。投薬ですぐに止まるでしょう。あと、食事でチ−ズをあげていますよね。チ−ズは種類によっては下痢を引き起こしますから、やめてください。ヨ−グルト程度でしたら大丈夫です。

点滴は栄養というよりビタミン系の補給、脱水などの栄養状態が悪いときにもちいますから、栄養補給というよりは低栄養状態を改善しようという意味あいがあります。

(症例 消化管内寄生虫による軟便)ゴールデンハムスター 生後約半年 オスケージに1匹飼い。特に元気がないというわけでもないのですが、時々、軟便をしているのが気になっています。といっても全部のフンが軟便ということではなく、1日に数粒、軟便が混じっているという程度なのですが。軟便は気にするほどのことではないのでしょうか?(1999/8/20 S・S様)

コメント;軟便についてですが、おそらく消化管内寄生虫などがいる可能性があります。消化管内寄生虫が増殖すると下痢をするのですが、数が少ないときや治りかけで軟便になります。糞便検査をしてみて、コクシジウムなどがでてくれば、サルファ剤というような薬を4-5日飲ませると治ります。他にも便虫、条虫、蟯虫などもいますので、一応動物病院で糞便検査をしてもらってください。

(症例 購入後のストレスによる消化管内寄生虫による下痢)ジャンガリアンハムスター、生後1〜2ヶ月ほどの男の子です。ペットショップから購入してきて1週間程です。先に1匹飼っており、その子とは別々のゲージでかってます。みたところとても元気で、よく食べますが、昨日から下痢をし始めました。全ての糞が下痢というわけでなく、トイレには普通のつぶつぶの糞もあります。下痢は少し赤みで、透明の液と交じってるのもあります。先生の下痢についての診察をみると、ストレスや悪環境も原因になり得るとのことですが、購入したてのわりには手にとてもなついてるので、来たばかりなのに手に乗せたりして遊ぶことが多かったことと、トイレをしっかりと覚えてないので、ハウスの中でおしっこをし、そのまま汚い場所にいるからでしょうか?それともやはり虫や細菌でしょうか?(1999/11/13 S・M様)

コメント;購入してから間もない頃に起こる下痢は概してストレスや環境の原因が作用していることが多いです。完全な下痢ではないことから、消化管内寄生虫の可能性があります。これは糞便検査をしてみて、寄生している消化管内寄生虫卵があればそれに対する駆虫薬をのませます。原虫ならサルファ剤、条虫ならプラジクアンテルなど。便に血が混ざっていたことから粘膜に炎症が起こっている可能性が高いです。ゼリ−状のものは粘膜です。早めに抗生剤や消炎剤などを投与して下痢を止めることと、ストレスのないような環境に慣れるまでは置いてあげてください。購入後、1週間はそっとしておいてください。トイレに関してはチップを厚めに敷き詰めればトイレは自分で決めますから、不必要です(しつけは不要です)。今回はストレス性の下痢の可能性が高いですが、トイレを作ると不必要な細菌感染を起こすので環境作りもハムスタ−に適した環境作りをしましょう。


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